電気温水器は貯湯タンクの耐水圧のため給水時に減圧する仕組みになっています。そのため水道水の水圧（250kpa～300kpaほどが目安）よりも給湯の際に水圧が弱くなってしまうというデメリットがあるのです。以前は最高でも100kpaでしたが、改善され190kpaほどの水圧を出せるようになっています。しかしこれが電気温水器の限界です。水圧を強くする対策としてシャワーヘッドを高水圧のものに交換するという方法がありますが、設置環境によっては効果が得られない場合もあります。

この問題を解決してくれるのがエコキュートです。エコキュートの標準タイプが190kpaほどでも、「パワフル高圧タイプ」が開発・販売されていますので、こちらを選ぶことで290kpaや320kpaといった一気に全身を洗い流せる強い水圧のシャワー環境にできるからです。水道直圧タイプの石油給湯器やガス給湯器をこれまで使用していて、電気温水器に変えたためにシャワーの水圧が弱くなり、それがとても気になる人もいます。「シャワーの水圧が弱いのは嫌」、「シャワーの水圧が強くなければ快適ではない」といったように、新しい給湯器を選ぶ条件として「水圧の強さ」を優先されるのであれば、間違いなくエコキュートをお勧めします。

ずばり水圧の強さがエコキュートの最大のメリットです。コスト面について後述しますが、仮にコスト面で多少のデメリットがあったとしても、電気温水器では得られない快適さがエコキュートにはあり、これがエコキュートの圧倒的な人気の秘密となっています。

交換して損なのか、得なのかの見極めの大きなポイントは、ランニングコストとイニシャルコストを合わせた「トータルコストの差」です。電気温水器とエコキュートではランニングコストとイニシャルコストのどちらもかなりの違いがあります。

電気温水器は電気のみを使って熱を作るのに対し、エコキュートは大気から熱を集める仕組みのため、消費する電力が異なります。熱量「3」を生み出すのに、電気温水器はそのまま「3」の電気エネルギーを必要としますが、エコキュートの場合は、電気エネルギーは「1」だけで、残り「2」は大気熱エネルギーです。つまりランニングコストは圧倒的にエコキュートがお得というわけです。

参考にパナソニックが公式サイトで公開しているランニングコストの差を4つの地域で比較してみましょう。同じ370Lサイズで年間の電気代を算出しています。

① 北海道電力「eタイム3プラス」のプラン利用

・エコキュート（HE-FPU37KQMS）／32,000円
・電気温水器（DH-37G5QUKM）／108,000円

② 東京電力エナジーパートナー「スマートライフL」のプラン利用

・エコキュート（HE-JPU37KQS）／24,000円
・電気温水器（DH-37G5QU）／102,000円

③ 関西電力「はぴeタイムR」のプラン利用

・エコキュート（HE-JPU37KQS）／20,400円
・電気温水器（DH-37G5QU）／86,400円

④ 九州電力「電化でナイトセレクト21」のプラン利用

・エコキュート（HE-JPU37KQS）／18,000円
・電気温水器（DH-37G5QU）／78,000円

北海道の場合では、およそ1/3、他の地域では1/4までランニングコストを軽減することが可能です。その金額は年間で6万～7万円ですから、エコキュートの耐用年数である10年を目安にすると、70万円ものランニングコスト削減ができることになるのです。これがエコキュートの最大のメリットと言えるでしょう。

ランニングコストだけに注目するとエコキュートに交換にした方がお得なのは明らかです。しかしイニシャルコストが高いというデメリットがエコキュートにはありますので、そちらもしっかりと比較していく必要があります。

先ほどのランニングコストの差を見ていく際のモデルとなっているそれぞれの製品の価格を比較してみましょう。記載するのはメーカー希望小売価格（税込）です。

① 寒冷地仕様

・エコキュート（HE-FPU37KQMS）／1,074,700円（工事費別）
・電気温水器（DH-37G5QUKM）／507,000円（工事費別）

② 一般仕様

・エコキュート（HE-JPU37KQS）／1,025,200円（工事費別）
・電気温水器（DH-37G5QU）／477,000円（工事費別）

本体価格がエコキュートの場合、従来の電気温水器の倍の設定になっていることがわかります。しかもこのケースだとエコキュートにはリモコンが別売りになっており、通話型のリモコンだとメーカー希望小売価格（税込）で56,100円追加しなければなりません。つまり50万円以上の価格差があるということです。イニシャルコストに注目すると圧倒的に電気温水器の方がお得ということになります。

ただし、ここまでお伝えしてきたランニングコストと本体価格だけではトータルコストの差にはなりません。設置工事費も加味しなければならないからです。また、電気温水器とエコキュートでは設置可能なスペースの違いもありますので、その点も検討する際には必要な要素になります。

▼ 必要となるスペースの違い

電気温水器は貯湯ユニットだけですべてをまかないますが、エコキュートは貯湯ユニットの他に、大気を集めて熱を生み出すヒートポンプユニットが必要になります。つまりエコキュートの方が必要になるスペースは広いということです。

先ほど比較した電気温水器とエコキュートの製品でどのくらいの設置スペースが必要なのかを確認していきましょう。

① エコキュート（HE-JPU37KQS）

・貯湯ユニット／高さ1810ｍｍ、幅600ｍｍ、奥行き680ｍｍ
・ヒートポンプユニット／高さ672ｍｍ、幅867ｍｍ、奥行き332ｍｍ

② 電気温水器（DH-37G5QU）

・貯湯ユニット　高さ1765ｍｍ、幅667ｍｍ、奥行き700ｍｍ

貯湯ユニットについてはほぼ同じスペースですので、エコキュートはヒートポンプユニットの分だけ広いスペースを確保しなければなりません。そのスペースを新たに確保できるのかどうかを確認しておく必要があるでしょう。ちなみにヒートポンプユニットだけは原則屋外設置です。ベランダや軒下に無理をして設置スペースを作ろうとした場合、別途コストがかかる可能性があります。また、雪が多い地域ではヒートポンプユニットの積雪への対策にコストがかかります。

▼ 設置工事の違い

電気温水器をそのまま新しい電気温水器に買い換える際にも設置工事は必要ですし、工事費はかかります。ただし電気温水器→電気温水器への交換の設置工事費が7万～10万円に対し、電気温水器→エコキュートへの交換の設置工事費は15万～30万円と、本体価格に加えて設置工事も高くなりますから、トータルコストは変わってきます。

ここまでの点を考慮すると、ランニングコストで70万円ほどエコキュートは削減できるものの、工事費やリモコン代などを含めたイニシャルコストは60万円以上エコキュートの方が高いということがわかります。本体価格はどこで購入するのか、どんな機種を購入するのかで変わってきますし、工事費がどこまでかかるのかも依頼する業者や現状の環境によって左右されますので、イニシャルコストはもっと下げられる可能性はありますし、逆に上がる可能性もあります。イニシャルコストが70万円以上の差になる場合は、エコキュートに交換するのは損だということになりますし、イニシャルコストの差が60万円以下になるようだったらエコキュートに交換した方がお得と判断できるでしょう。

注意しなければならないのは、あくまでも耐用年数10年で比較した計算ですから、お湯を頻繁に使用して稼働時間が多い場合は、エコキュートが8年ほどで寿命を迎えるケースもあります。そうなると削減できるランニングコストは軽減されてしまいます。そのあたりも踏まえて検討するのがいいでしょう。

お伝えしてきたように、住んでいる地域や家族構成、どこでどの機種を購入するのかによってトータルコストが変わってきますので、必ずしも電気温水器をエコキュートに交換するのがお得とはいえません。ただし、給湯器はコスト面だけで選ぶのではなく利便性も含めてニーズに合った製品を購入するのが一番です。冒頭でご紹介したように「エコキュートならでは」の機能や性能面での利点を考慮すると、新たに導入するのであれば電気温水器よりも断然エコキュートをお勧めいたします。

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